さらさく

二次創作

駆け引き

いつもどおり、家事を終わらせて。
たまたま日向家のリビングでのんびりしようと思ってそこへ行ったら。

なぜかそこにはガルル中尉殿が、いた。
しかも。
あまりにも「当たり前!」ってな感じでいるもんだから入って数十秒はまったく持って気がつかなかった。

そっと窓のほうを覗くと、頭を抱えているギロロの姿が目に映った。
見なきゃよかった。
ひとまず深呼吸をしてから思い切って声をかけた。

「あの~、ガルル中尉殿?なんで地球に来ていらっしゃるのでありますか?」
「ふむ。私の可愛い可愛い弟の様子を見に来たことと・・・ケロロ君と話したいことがあってね」

その返答にほっと息をつく。
"ケロロ君"と呼んだので、仕事関係ではないのであろう。
しかし、話したいことって何でありましょうなあ。
面倒ごとには巻き込まれたくないのでありますが・・・聞くまで動きそうもなさそうでしょうし・・・。
よし、腹をくくって聞くであります!!

「それで中尉殿、話ってなんでありましょうか?」

すると、中尉は待ってました!といわんばっかりに妙にそわそわして小声で話しだした。

「実はクルル曹長のことなのだが・・・」

"クルル"という単語が飛び出したのであわてて周囲を見やる。
大丈夫だ、今のところは。

「なんでしょうか?」
「クルル曹長の普段の様子は?それと誰かと付き合ってたりなんか・・・ああ、あと小隊内での関係とか・・・・」

何だ、この紫。
こいつもクルルのこと狙っているのでありますか・・・。
ゲロゲロゲロ・・・ここは一つ地球にいる我輩が優位だということを思い知らせてやるであります。

「ま~嫌なヤツを通しているでありますよ?でもたまにたじろいでいるときはそんなんでもないでありますが」
「そうですか、それで?」

ど、動じてない。
なかなかやるであります・・・。
はっ!もしかしてコレは少佐時代のクルルを知っているという余裕の表れでありますか!?
うむむぅ。

「それでもってよくモア殿と一緒に基地管理をしているであります。でも、」

話の途中でスッとガルル中尉が姿を消した。
次いで来る悪寒。
振り返るな!
今こそ見ざる聞かざる言わざるの精神をつかうであります!

「ク~ックックック。たいちょ~ついさっきまで誰かと話をしていなかったかい?」
「あ~あ~、誰もいないみたいだし、静かだなぁ!あ、あたりまえか」

言ってしまった後に冷や汗が垂れる。
しまった・・・。
ついいつものノリの調子で答えてしまったであります・・。
クルルがそばによってくる。
ただならぬ気配を発しながら。

「な~んにも知らないよッ!それじゃあ!!」

気がついたら、逃げ出していた。
なんで??




「よぅ……なんでこんなところにいるんだい?」

あらかじめ、わかっていたといわんばっかりに部屋を見回しながら言う。

「はじめから、わかっていましたか」
すっとガルルが姿を表す。

「あったりまえだぜぇ。誰がここのセキュリティを管理しているんだっての」
はぁ、と肩を落としながらクルルが言った。

そんなことは意に介さず、
「私がここにきてすぐにこなかった。そして私がケロロ君が話をしていると来るとは、ヤキモチですか?少佐は今でもかわいいですね」

ガルルは続けた。
しまいには顔がほころんでいる。
その光景に、クルルは青筋を立てた。

「元、少佐だぜぇ。ちなみにアンタが言ったことはす・べ・て!アンタに都合がよすぎる妄想に決まってるだろうが・・っ!」

そのことは聞かず、いまだ”都合のよい妄想”から帰還しないでにやけているガルル。

「………。」

自分ことを相手にしないことに、物寂しさを感じた。
あんなに、勝手なことを言っているくせに。
悔しかった、腹立たしかった。
問い詰めようとラボ行きの穴をちょうど自分たちの所へ開ける。
落ちていくなか、何故かガルルは満足そうな表情を浮べていた。




ケロロは、中途侵略状況を報告するためにケロン軍本部に帰還した。
いつもは、通信及びに証拠の提出なのだが、芳しくない結果の数々より、いい加減真面目にやるように自覚を促そうとしているらしい。
だから、ケロロは先日クルルに作成してもらった(改ざんした)侵略報告書を手にして、上層部に報告のため向かった。
……ケロロには真実を報告する気はさらさらなかったが。

そんなこんなで適当に上層部への侵略状況をはぐらかし、小隊の予算減額と有給休暇を減らすという、比較的軽い処罰ですますことができた。

面倒な中間報告を終え、地球に戻ろうとしたケロロのそばをガルルが通った。
見かけたからには無視するワケにもいかず、軽く挨拶をしようと話しかけた。




「お久しぶりであります。ガルル中尉殿」
「おや、ケロロ軍曹どの。中間侵略報告でしたのかな?」
「はい、そうであります」
それでは、と去ろうとした我輩に、ガルル中尉の険呑とした声が耳に入った。

「クルル曹長があなたのために作った報告書に沿って……だな」

はっとして振り返る。

「いま、なんと……?」
あまり感情をあらわにしないガルルだが、明らかに憎々しげにケロロを見やる。
「だから、クルル曹長はあなたのためだけにした…ということですよ。あなたにとって、クルルは都合のよい部下だと思われていることを知っていて、だ。好意がけっしてクルルの望む形で返ってはこないと知っていて……」

なぜ、ガルルがそんなにクルルのことを知っているのだろうか。
あれほど繋がりを保とう、作ろう、としていた己よりも。
ただ、この場は否定することしかできなくて。

「そんな、クルル曹長を”都合のよい部下”なんて思ってないであります!中尉ともあろう人が、なぜそんなようなことをおっしゃられるのでありますか!?」
ガルルはその問いには答えず、
「本当にそうだろうか……?」
「本当であります!これでは地球侵略へ戻るので失礼いたします!!」

驚きと怒りで頭がいっぱいだったケロロは、心配そうな顔で
「クルルには、これ以上つらい思いをして欲しくないからだ………」
と先ほどの問いに対してガルルがつぶやいたことに気がつかなかった。

嫉妬

初めて会ったときの彼は。すごく空っぽな瞳をしていて。
何もかも信じない。自分なんてどうなったっていい。
という風に考えている空気を丸出しにしていた。

でも。我が輩の小隊に入ってから、少しずつ変わっていった。
相変わらず、自分なんてどうなったっていいという思考だけれども、少しは他人を信じてもよいと思いはじめている。

そして。
彼が小隊の他の仲間とも打ち解けた・・・とは言い難いけれどそれなりにつきあうようになっていった。

隊長としては喜ぶべきことなのだろうけれど、心の中にもやができてくる。
それは、__我が輩がクルルをはじめに連れ出したのに__という嫉妬。
「クルルに一番近くにいていいのは我が輩なの!!」と叫びたくなるような。
どうしたらいい。
どうしたらいい?

___大丈夫。まだ一番近いのは我が輩。少しずつ近寄ってしまえば、他には決してわたさずに済む___

なんて1人よがりな考え。
でも、クルルの隣をとれるのなら。
待っててね、今、そばに。

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