さらさく

二次創作

踏み出しきれない

私と彼は恋人、ということででいいのでしょうか。
日本はそう思い、少しだけため息をついた。
確かにイギリスさんから「好きだ」、と言われて私はそれに「私もです」と返した。
けれどもそんなやり取りからもう一年近くたっているのにもかかわらず、イギリスさんと私の空気というか雰囲気、行動がそのやり取りの前と一切変わらない。
イギリスさんの「好き」はもしかしたら“友人”としての「好き」だったなんて言うことだったらどうしましょう。
私はそうではないのに。
こうなったら、その、恋人らしいこと、私から仕掛けてみましょうか。
…ものすごく恥ずかしいですが。
ひょっとしたら私の好きとは違っていたとしても流されてくれるのかもしれない。
と打算的な考えも浮かんでしまい一人自分を恥じた。

俺とあいつは恋人、のはずだ。
イギリスはそう思い、小さくため息をついた。
俺が「好きだ」と言って日本は「私もです」と返してくれた。
それはそれは嬉しくてしばらく浮かれていた。
しかし、後で冷静になってみると、俺はどういう意味での「好き」なのか伝えてないことに気が付いた。
もしかしたら日本は俺の言葉を“友人”としての「好き」だと思って答えてくれたのではないだろうか、と思った。
俺の一方的な思い込みであることが怖くて、告白前の状態を維持させようと努力してきた。
でも、それももうそろそろ限界だ。
もう一度、どういう「好き」か日本に伝えよう。
じゃないと、辛すぎて何か取り返しのつかないことをしでかしてしまいそうだ。

イギリスが”恋愛”の意味で自分のことが好きなのか長い間悩んだ日本は意を決して直接イギリスに聞きに行くことにした。
しかし、いざイギリスの家の門の前に立つと、とてもではないが緊張してしまい、インターホンの手前で日本の手は止まってしまう。
日本はやや躊躇した後、つばを飲み込むとインターホンを押す。
これでもう後に引けない、と自分に言い聞かせて。

日本が来る、と連絡を受けてイギリスは驚いた。
日本がイギリスを訪ねるときは遅くとも二週間前にはその旨を伝えられる。
けれども今回に限ってはその週末と急だった。
正直言って日本に自分から好きだと告げようと決心していたイギリスにとってはものすごい不意打ちだった。
急になんてよっぽどなことがなければ日本はしないだろうと思い、イギリスの脳裏には悪い予想ばかりがよぎった。
時計を見、もうそろそろ日本が来るとイギリスは焦った。
どんな理由で日本が来るのかわからない。
もう一度好きだと告げていいのか。
どうしたらいいのかイギリスには思いつかなった。
そうこうしているうちに、とうとうインターホンが鳴った。
その音を聞き、今この時に言わなくてどうする!と自分を叱咤して日本を出迎えに玄関へ向かった。

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