さらさく

二次創作

ほのぼのって…

小隊会議室。
今日も今日とて実がない侵略作戦を練るのかと、ケロロを待つ面々。
そこに、いつになく気合の入ったケロロが入ってきた。

「みんな~、ちゃんとそろっているでありますか?本日の我輩はいつもと違うでありますよ~」
明らかに悪巧みをしている表情でゲロゲロと笑う。
そんなケロロに、冷静なツッコミが一言。
「軍曹さ~ん、もったいぶってないでさっさと言ってくださいですぅ」
さらに高笑いが増し、異様な雰囲気をかもし出す。
「ゲロゲロリ……。実は我輩ものすごくお手軽に平和に侵略できる方法を思いついたのであります。それは………」
かもしだす重苦しい雰囲気につられて全員がつばを飲み込む。

「地球人をほのぼのさせて、その隙にさりげなく地球侵略しちゃおう作戦!であります!!」
これ以上はない!と満足そうに言い切った。
一転、会議室の中には先ほどまでの緊迫感が消えうせ、なんともいえない空気が漂った。

……………
「あほかぁぁぁぁ!」
いつもがいつもなだけに期待させられた分、ショックが大きかったギロロがケロロの胸倉をつかんで揺さぶる。
他のメンバーはさっきの発言をなかったことにし、いつも通り、各々の行動を開始し始めた。

「ちょっと、もう少し話を聞くでありますよ~」
揺さぶられながらもケロロが言う。
渋々聞く体制をとる。
「ケロロ……ふざけた内容だったらそのときはどうなるかわかっているよな?」
銃口を向け、脅しをかける。
そんなことは意に介さないかのようにケロロは口を開いた_____。

「え~、まずは以前のぬいぐるみになった作戦。我輩もつられずにリラックスしなければけっこういけたと思うであります。そこで!地球人たちだけリラックスさせるにはどうすればよいのか……」
「軍曹さ~ん、前振りはいいですから早く要点だけ言っちゃってください」
「×××が○○○○○で………」

ひたすら熱弁をするのに全神経を注いでいるのか全く話を纏め上げるという気配はない。
それにいい加減ぶち切れそうになるタママとギロロ。
だが、2人がどれほど苛立ちをこめた視線を送ってももちろん気がつくはずがない。
次第に、実力行使をしようと構えをとる。
そんな2人を必死でなだめすかすドロロ。
「それでアレがこうなって…………


まだまだまだ続く話。
ループ状態に陥る対応。
「…………と考えると………」

まだまだまだまだ続く話。
「あ~も~うざってぇ、チャチャと略すぜぇ」
と、クルルがなにやら機械を取り出しスイッチを押す。
すると、ケロロの話すスピードが約2.5倍位になった。

突然のケロロの変化に3人は驚いた。
「……?クルル殿、なにをしたでござるか?」
「隊長のスピードを速くしただけだぜぇ。この亀兎何好銃(カメトウサギドッチガスキガン)でな」
「まあ……これであの長ったらしい話は聞かずにすむのか」
「クルル先輩さすがですぅ」

しばらく経って……
ようやく結論に入る様子が出てきたため、効果を切った。
「と、いうわけで地球人だけをリラックスさせるにはほのぼのな雰囲気を出せばイチコロであります。そこで…[ほのぼのしちゃって地球人も我輩たちも幸せ!作戦]を立てるであります!」
「で?その[ほのぼの]とやらは何かわかっているんだろうな?」
ギロロのその一言に、
「あ」
と、あっけにとられた表情をするケロロ。
「まあ、ふわ~と幸せな気分になったり、まったりとのほほんできるようなもの……でありますかな?」
「俺に聞くな!!」
「ちょ、ちょっと2人とも、落ち着くでござる」

言い合いになりそうなのをドロロがなだめ、とりあえずおさまった。
仕切りなおしとばかりに、
「じゃあ、ほのぼのとは何か!そこから考えるであります。誰かこれだって思えるものはないでありますか?」
一応まともな議事を始めた。
「そう言われてもなかなか思いつかないですぅ」
名指しであれこれ聞かれる前に、タママが意見を述べる。
それに同調してドロロも意見を話す。
「たしかに。あらためて具体的なのを、と聞かれると表現しづらいところでござるな」
ケロロが残ったまともな意見を述べてくれそうなギロロに目配せしたが、
「質問したのは俺だろうが」
と一も二もなくなく切り捨てられた。
「じゃあ、クルル曹長。調べて欲しいであります」
「ちっ。めんどくせえな」

「しらべたぜぇ~」
さっと検索して表示されたものを全体に見えるモニターへと映す。
そこには、
かすかに明るくなるさま
ほんのり心の暖かさなどが感じられるさま
わずかに聞いたり知ったりするさま
夜明け方
と、あった。

「で?具体的には?」
その言葉にきょとんとするケロロ。
「へ?何のことでありますか?ほのぼのの意味はわかったでありますよ?」
「軍曹さん、意味はわかっても何をすればそうなるのかがそれじゃあわからないじゃないですか」


簡単に補足するとようやっと意味を理解したのか顔を若干青ざめた。
「……けっきょくどうすればいいのか見失ってしまったでありますなぁ」

グダグダだった会議も、一挙にしらけた。

___暗転___

*************

ほのぼのとは、ある雨の日、なんてことのない、日にこそ、平穏はあるのではないのでしょうか?

「あ~っっ!なんで今になって書類整理なんてしなければならないんでありましょう!?」

大量の書類に半ば埋もれるようにしながら処理をしているケロロ。
そんな彼の周りには同じようにしてタママ、ギロロ、クルル、そして今回は忘れられなかったのかドロロがいた。
あんまりにも溜め込み過ぎて今にも部屋から溢れださんとしていた。

「ひぃ~~!早く片すであります~!」
まるで、自分にひとかけらも悪い要素はないかのようにケロロが言う。
ソレに一斉に非難の眼差しを向ける小隊メンバー。
「ったく、こまめにやらんからこういうことになるんだ貴様は……!」
「せめて、こんなになる前に一言言って欲しかったですぅ」
「それなら、自分の分だけでもやっていたんだがなぁ。なんせ、書類は一括で隊長に送られるからなぁ」
「左様。拙者が言い出さなかったらどうなっていたことか」
もっともな切り返しにケロロが呻く。
「だからって、だからって……。こんな適度な過ごしやすい雨の日にやる必要はどこにあるのでありますか!?」
ギロロはピキリと青筋をたてた。
「こんな日だからだろうが!!どうせ貴様は[あ~今日は湿度が低いからやる気がしないのであります。]とかなんとか理由を付けてやらんだろうに」
「う゛っっっ」
痛いところをつかれたのか、ぐうの音もだせないケロロ。
言いたいことはおおよそ言えたのか、ケロロ以外はそれを尻目に黙々と処理をしはじめる。

しばらくして、各々の書類の量がだいたい半分くらいになった頃。
だいぶ時間を費やしたので、一休みしようとした。
が。
ようやく復活したケロロが手元にあった書類を見て真っ青になった。
そして言いにくそうにポツリと。

「……あの~~。実は一度に送れないほど溜まっていたらしくて、そっちで取り寄せろってあるのでありますけど……」
「「「「はぁぁぁ!?」」」」
あまりにもあんまりな事態に頭を抱える。

「それで、どのくらいあるんですかぁ」
ため息混じりにタママが言う。
引きつった笑みをうかべ、ケロロは
「さっきやり終えた分の2倍くらいであります…」
とのたまった。
頭痛がしはじめたのか、こめかみを押さえるギロロ。
もはや叱るのも効果がないと諦めたようだった。
衝撃の事実に放心していた。
「ちっ……。仕方がねえ。さっさと取り寄せてくるぜぇ」
その一言でようやく現実に戻ってきた。

クルルが書類を取り寄せ、ケロロの部屋へ運ぼうとしたが。
「多すぎて入りきらねぇ」
それほどまでの惨状に、唖然とした。
「もうこれはココでみんなで捌くのは無理……でござるな」
「上を借りてやるしかないだろうな」
「ナッチーとフッキーに居間を空けてもらうですぅ」
「それが妥当でありますな……」

なんとかして、ケロロの部屋よりは若干広い居間を借り、それでも収まりきらないモノは廊下の端に並べた。
「これで何とかできるでありますな」

………数十分後……
この頃になるとみんな疲れがたまってきたのか、思い思いに体をほぐしたりし始めた。
「もうそろそろ休憩にしませんかぁ?」
「そうでありますな!」
いい加減だるくなっていたのか、あっさりと承諾された。
「じゃあ、拙者はお茶でも入れてくるでござる」
なんだかんだで気が利くドロロが腰を上げる。
それに合わせてきだるげに周りを適当に整理し、お茶が飲めるスペースを作るクルル。
タママはいそいそとお菓子を持ち出す。
依存といわんばっかりにガンプラに手を出しかけるケロロを阻止するギロロ。
ちょうどよいタイミングでお茶を運んできた。
お茶とお菓子で席をかこう。
全員が全員疲れのせいか、いつもは騒がしいはずだが今日はいつもが嘘のように静寂につつまれていた。

静寂といっても無音ではない。
お茶をすする音。
お菓子へ手を伸ばす音。
そして心地よい雨のリズム。

いつしかすっかり疲れはとれたようだった。
そして、残りを片付けようとケロロが手をのばす。
「………あれ?」
よくよく書類を見返すと。
何故か期限が恐ろしく先のものだった。
どうやら、本部の方が一枚も二枚も上手だったらしい。
はじめとは違う意味で血の気が引いた。
なんかいい雰囲気だったのにこの事実を言えるだろうか?
否、言える筈がない。
言ったら最後、どのような目にあうか____。
幸い、誰も気がついていないようだった。

黙っておこうか。
せっかくみんなが手伝ってくれたんだし、ね。
結局最後の最後でわかってしまうのだが。
それまでは、本当に本当に忙しながらも穏やかな時間が流れていた_______。

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